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その場の空気で書く日記

【読書感想】『三体』劉 慈欣(著)大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ(訳)立原 透耶(監修)【早川書房】

三体

 今年、SF界隈で最も話題となった……かどうかは知りませんが、とにかく売れていると話題のSF長編『三体』。

 お財布が寂しい私は、節約のため本の購入をあきらめ、代わりに図書館で借りることにしました。私が予約を申し込んだ時点ですでに7人が待っていて、先日、ようやく私の番が回ってきました。しかし、私の後にもすでに23人が待っているので、期日までに必ず返却してね、という紙が挟んでありました。

 そんな大人気の作品ですが、私は中国人作家のSF作品を読んだことが、今までほとんどありませんでした。ハヤカワのオールタイムベストか何かで、短編を読んだことがあるくらいです。

 実はまだ最後まで読んでなくて、今は5分の3くらいまで進んだところです。それでも、物語のスケールが大きくて、一度にすべての感想を書くことはできないだろうし、私にはこれだけの物語の感想をまとめる根気がないと思われるため、もう今の時点でざっくり書いちゃうことにしました。ざっくりとしか書かないので、ネタバレはありません。

 あらすじなど作品の概要について知りたい方はWikipediaを参照してください。

ja.wikipedia.org

 この物語は三部作だそうで、今回出版された『三体』はその第一部。舞台は中国の文化大革命の時代から始まり、登場人物の回想を交えて時代を前後しながら物語が進んでいきます。

 私は、半分まで読み進んでやっと「ああ、こういう話なのか」とわかりました。それまでは、いろいろな出来事や事件が起きて、スリリングな展開はあるものの、そういった一連の事件の裏で、物語の主軸になるものは一体何なのか、さっぱり見えてきませんでした。

 しかし、物語の主軸が見えた途端「えええ、こんなスケールの話なの?」とも思いました。SF小説ですから、宇宙規模の話は別に珍しくありませんが、最初の地味な展開からすると、まさかこんな方向に物語が進行するとは思いませんでした。

 地味な展開というのは、人間の愚かしさや泥臭さを中心に描写していくところで、その愚かしさと泥臭さが、そのまま宇宙規模の話に繋がっていくのです。

 で、物語が宇宙規模に展開されてからも、結局人間の愚かさと泥臭さは消えないまま、それどころか、その泥臭さが宇宙規模の話と地続きで描かれていくことに、奇妙な感覚を覚えます。確かにSFなんだけど、SFっぽくない。それが、ちょっと普通じゃないリアル感を醸し出しているような気がします。

 中国を舞台にした作品なので、登場人物はほぼ中国人。当然、名前も馴染みのない中国人の名前なので、覚えるのが大変。最初はルビがふってあるものの、あとは漢字表記だけなので、さっきの登場人物がページをあけて出てくると、この名前なんて読むんだっけ?と遡って確認しながら読んでいます。

 最初に出てくる文化大革命や、実在の人物名なども、近代中国の歴史や重要人物に関する知識がある人でないと、わからない情報が多いです。私はさっぱりわかりませんでしたが、そこはあまり話の筋に関係ないので、わからなくても大丈夫です。

 第一部の残り5分の2を残していますが、正直、この先の展開に不安もあります。こんだけ大風呂敷広げて、ちゃんと終わるのかなぁ、とか。いや、たとえば日本の漫画やアニメでよくある大風呂敷とは、意味が違う感じではあるんですけど。

 大風呂敷がどうというよりは、地面を這いつくばるような泥臭い人間ドラマと、宇宙規模の壮大な物語が、果たしてこのままうまく併存していけるのかという不安。ここまではちゃんと面白かった。でも、この面白さを維持したまま、最後まで盛り上げて、収束できるんだろうか。

 いや、今の時点で物語の主軸が見えてきたといっても、まだ第一部だから、物語はこれから二転三転するはず。まだ何か裏があったり、予想もできない展開が待っているはず。そんな期待を抱くに足る面白さではあります。

 要するに、読めないんですね。先が。いや、先が読めないというより、この物語世界が、今のまま変わらないという保証がない。普通なら、この物語はこういう世界なんだと分かったうえで、安心して読み進められます。しかしこの作品は、今の時点で見えている世界が、またどこかでガラリと変わるかもしれない、という不安を抱かせます。

 その不安が的中したほうが、きっと面白くなるんでしょう。

 的中することを期待しながら、続きを読んでいきたいと思います。

The Three-Body Problem (English Edition)

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